東京高等裁判所 昭和39年(ネ)1397号 判決
いずれも成立に争いのない甲第一〇号証の控訴会社定款及び乙第九号証の控訴会社登記簿謄本によれば、控訴会社は昭和三四年一一月一三日の経過と共に三〇ケ年の存立期間満了により解散し、いわゆる清算会社となつたものであることが認められる。しかし、控訴会社代表取締役熱田すゑは、右解散前既に取締役としての任期は満了していたが、後任の選任が行われなかつたので、解散当時商法第二五八条により依然取締役の権利義務を有したものであることが被控訴人提出にかかる商業登記簿謄本(記録第一一七四丁)によつて認められるから、商法第四一七条第一項、第二五八条、第四三〇条第二項の各規定を類推し、同人は右解散と同時に当然控訴会社清算人の権利義務を有するに至つたものと解すべきである。被控訴人は商法第二五八条により取締役の権利義務を有するにすぎない者は法定清算人となり得ない旨主張するけれども、右取締役の権利義務を有する者は単なる取締役の職務代行者ではなく、特段の事由のないかぎり法律上取締役と同視せらるべきものであつて、同法第四一七条第一項の適用はできないとしても、前示の如き類推解釈を妨ぐべき特段の事由がないから、被控訴人の主張は失当たるを免れない。
のみならず、本件においては、本件控訴提起後である昭和四一年六月五日午後一時控訴人熱田すゑ方において控訴会社株主全員が出席して全株主の合意により臨時株主総会を開催し、控訴会社清算人に右熱田すゑを選任する旨及び本件訴訟において従前同人が控訴会社を代表してした訴訟行為を追認する旨の各決議をしたことが、当審における控訴人熱田すゑ本人尋問の結果及びこれにより真正に成立したと認める甲第二九号証、成立に争いない同第三〇号証によつて明らかであり、(当審証人青木文雄の証言及び乙第一九号証の存在だけでは右認定を左右するに足りない)。その後本件口頭弁論期日に控訴会社が右追認の意思表示をしたことは当裁判所に顕著である。
以上いずれの点から見ても、熱田すゑが控訴会社を代表して提起した本件控訴は、適法であつてその代表資格の表示が代表取締役となつていることは何らこの点に影響を及ぼすものではないから、被控訴人の本案前の抗弁は採用しない。
(岡部 川添 蕪山)